野村良太の山あり谷あり大志あり:15
2022年に前人未到の北海道分水嶺(ぶんすいれい)積雪期単独縦断を達成し、28歳で植村直己冒険賞を受賞した道内の山岳ガイド野村良太さんのコラム(紙面は北海道支社版掲載)です。
8月14日と15日、クラーク記念国際高校の高校生たちと羅臼岳、斜里岳に登山。一人の男子生徒が、他のみんなに比べて経験が少ないと聞いていたので、2日間とも先頭でガイドする僕のすぐ後ろを歩いてもらうこととした。彼のペースはあまり上がらず、特に下りが苦手なようで、5時間を超える羅臼岳の長い下山に苦戦していた。
ところが翌日、これまた長い斜里岳の新道コースの下り。彼は中盤まで苦戦していたのがうそのように、最後の2時間で突如「開眼」「覚醒」した。
それまではコースタイムよりも遅れ気味だったのが、むしろ目に見えて速くなった。あまりの急変に、彼が投げやりになってしまったのではないかと心配したが、周りの高校生たちは仲間の急成長に大盛り上がりだ。
この無邪気で素直な反応が若さということなのだろうか。「覚醒」する直前、その子が「もしかして速く歩いた方がラクかも……」と、ボソッとつぶやいたのが聞こえた。
体力不足かな、とか、筋力の問題か、歩き方の問題か、はたまた思い切りが足りないだけだろうか、などと、あれこれ考えていたけれど、ただ単にきっかけが無かっただけなのだろう。
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一瞬の出来事すぎて、何がき…